2014-01-01から1年間の記事一覧

「やぶにらみの暴君」-ポール・グリモーの最高傑作

今回は1979年にリメイクされた「王と鳥(Le Roi et l'Oiseau)」ではなく1952年公開の「やぶにらみの暴君(La Bergere et le Ramoneur)」についてレビューしたいと思います。ポール・グリモー、そしてマルセル・カルネ「天井桟敷の人々」や「霧の波止場」の脚本…

タランティーノ初期の短編「マイ・ベスト・フレンズ・バースデー」

マイ・ベスト・フレンズ・バースデー(マイ・ベスト・フレンズ・バースデイ) My Best Friend's Birthday クエンティン・タランティーノが1984年~1987年にかけて撮った短編。 元々は76分あったそうですが火事で36分だけに。 フィルムは白黒で、タランティーノ…

「ザ・ウィメン」-ジョージ・キューカー最高傑作

ザ・ウィメン The Women 「女性たち(The women)」の題でも知られるキューカーのコメディ「ザ・ウィメン」。何故これほどの傑作が日本で未公開のままだったのか。ジョーン・クロフォードの魅力が日本人に伝わりきらない現状が今も続いています。ポーレット・…

「B級映画」は褒め言葉

B級映画=二流という考え…一体誰が提唱したんだか、まったくもって愚かしい考えです。正確に言えばB級的感覚で撮られた娯楽映画と言った方が正しいでしょう。 大金をかけて退屈な文芸映画を1本撮るよりも、少ない予算で幾つも面白い映画を撮る。 映画じゃ…

「戦争・はだかの兵隊」-コメディ

戦争・はだかの兵隊 La grande guerra 「大いなる戦争」の題でも知られる戦争コメディの傑作。ニーノ・ロータの穏やかで何処か哀しさもある音楽が印象的。舞台は第一次大戦。徴兵検査から訓練、一時の平和から一気に戦争へと突っ込んでいく内容。徴兵をちょ…

「いつもの見知らぬ男たち」-イタリア式コメディ

いつもの見知らぬ男たち I soliti ignoti ★★★★(傑作) マリオ・モニチェリは、人情味やエロティックなやり取りが特徴的なイタリア式コメディの第一人者として、戦前から60本以上の作品を監督した作家です。また、ピエトロ・ジェルミやロバート・Z・レナー…

「結婚行進曲」-エリッヒ・フォン・シュトロハイムの大傑作

結婚行進曲 The Wedding March元々は4時間30分あった今作と「アルプスの悲劇(ハネムーン/The Honeymoon)」の二編からなる作品。 再編された「結婚行進曲」のみ1時間49分~現存シュトロハイムはグロリア・スワンソンと組んだ「メリィ・ウィドウ」や「クイーン…

「運河」-ベルナルド・ベルトルッチの短編

運河 Il canale ベルナルド・ベルトルッチは初期に「豚の死(La morte del maiale)」や「ロープウェイ(La teleferica)」といった短編を撮っています。 この作品は、1966年当時のスエズ運河の様子を捉えたドキュメンタリー。ベルトルッチが「革命前夜」…

「彼等はフェリーに間に合った」-交通事故防止キャンペーン

彼等はフェリーに間に合った De nåede færgen カール・テオドア・ドライヤー(カール・ドライエル)流交通事故防止キャンペーン映画。他愛の無い映画ですが、ラストはドライヤー・・・というよりデニス・ホッパーの「イージー・ライダー」に繋がるような滑稽さ…

ジョン・フォードの短編2本

ジョン・フォードがジャック・フォード名義の時代に撮った短編を2本紹介。 インディアンの郵便(By indian post) ジョン・フォードがジャック・フォード時代に撮った短編。フォードが初期に撮った短編はフィルムが散逸してしまった物も少なくありませんが、…

「ピロスマニのアラベスク」-パラジャーノフの短編

ピロスマニのアラベスクАрабески на тему Пиросмани/Arabeskebi Pirosmanis temaze 19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したナイーヴ派の天才画家・ニコ・ピロスマニへのオマージュを捧げたセミ・ドキュメンタリー。グルジア(ジョージア)に生まれたこの画…

「ブロンコ・ビリーの復活」-ジョン・カーペンターが関わった作品

ブロンコ・ビリーの復活 The Resurrection of Broncho Billy 西部劇の世界に憧れる若者の何処かノスタルジックな一時を描いた現代劇です。ジム・コロスが監督、学生時代のジョン・カーペンターが編集と音楽を担当したこの作品はアカデミー賞の短編部門で受賞…

「カイエ・デュ・シネマ」選出:戦後アメリカ映画のもっともエロティックな瞬間ベスト

「フランソワ・トリュフォーのオールタイムベスト」へ 「カイエ・デュ・シネマ」1954年32号においてフランソワ・トリュフォーをはじめとする執筆陣が選出したリスト ●「もっともエロティックな瞬間ベスト」11本 浜辺の女 ジャン・ルノワール におけるジョーン・ベネ…

リュミエール兄弟の短編-シネマトグラフの誕生

エジソンやリュミエール兄弟よりも早く映画を創造したとされるルイ・ル・プランス。ル・プランスの行方が途切れてから彼の産んだフィルムもしばらく消息を絶っていましたが、消息を絶つ前にフィルムを見た人間が少なからずいた事も確か。 エジソンやリュミエ…

ロマン・ポランスキーの短編2本

タンスを持った二人の男(Dwaj ludzie z szafa) 天使たちの失墜(Gdy spadaja anioly) ポランスキーはイエジー・スコリモフスキと組んで「水の中のナイフ」で長編デビューするまでに幾つか短編を撮っています。その中から、初期の最高傑作の1つと言って良い作品を二つ紹介した…

「忠次旅日記(忠治旅日記)」-幻の戦前日本映画最高傑作

忠次旅日記(忠治旅日記) ※「忠次旅日記(忠治旅日記)」は第一部「甲州殺陣篇」は1分、 第二部「信州血笑篇」と第三部「御用篇」を合わせた107分(1時間47分)現存。版によって1時間14分、1時間34分のver.もあり(2020年7月18日) 拝めるとはいえ細かい箇所が欠損…

ベンヤミン・クリステンセンの「魔女」-ホラー映画の元祖的傑作

魔女 Häxan デンマークのカール・テオドア・ドライヤーの師匠的存在、ベンヤミン・クリステンセンによるドキュメンタリーとフィクションをゴチャ混ぜにしたカオスなホラー映画。。 今見れば恐怖はまったく無いかも知れませんし、終始ゆったりした展開で退屈…

「暴虐工廠」-ワン・ビンの短編、文化大革命の記憶

暴虐工廠 ★★★★(傑作) オムニバス「世界の現状」に収録されたワン・ビンによる15分の短編。工場の廃墟と思わしき場面から、過去の文化大革命における粛清の一部分へと繋がっていく。カメラは手持ちなのか少し揺れを感じます。 ある男がベッドで起き上がり、も…

「放送」-テオ・アンゲロプロスの短編

放送 Εκπομπή ★★★★(傑作) テオ・アンゲロプロス初期作短編「放送」について。 テオ・アンゲロプロスの数々の傑作の中で、「放送」は最も活き活きとした、短くも中身の濃い映画です。 たった20分でアンゲロプロス特有のロングショットとクローズアップ、そ…

フィルム・ノワールベスト100①

●「フィルム・ノワール」について ●オススメの傑作・名作たち ●関連ページへ ●日本未dvd化2本 ・「②」へ ●「フィルム・ノワール」について 数ある映画の中で、フィルム・ノワールほど曖昧かつ広範囲に当てはまるジャンルはありません。 基本的要素としてよく…

セルゲイ・エイゼンシュテインの短編について

●概要 グルーモフの日記(Dnevnik Glumova) センチメンタル・ロマンス(Romance sentimentale) ベージン平原(Bezhin Meadow) ●概要 セルゲイ・ミハイロヴィチ・エイゼンシュテイン作品の中で最も軽快で、明るく、ちょっぴり切ない短編3つを御紹介したいと思い…

キング・ヴィダー「剣侠時代」-剣戟映画の傑作

剣侠時代 Bardelys the Magnificent ★★★★(傑作) キング・ヴィダーは「ビッグ・パレード」や「ラ・ボエーム」等サイレント時代にとんでもないレベルの傑作が多いですが、冒険活劇でもズバ抜けて面白いのが1本、コレです。※以下、激しいネタバレ1926年に…

廉価版DVDで思う事

廉価版DVDの魅力と、欠点。 安いものによってはたった500円ぽっちで映画を自分のものにする事が出来ますがその反面、画質は保障できません。中には画質が良いものもありますが、たまに粗悪な代物が混じっていたりするんですよ。 例えば、黒澤明の「羅生門…

ラオール・ウォルシュ「港の女」-「雨」の傑作

雨 Sadie Thompson サマセット・モームの短編を戯曲化した舞台の映画化で、ラオール・ウォルシュの傑作。同じ原作の映画化でルイス・マイルストンの「雨」は淀川長治さんも参加した「映画千夜一夜」で興味を持ち、そこでウォルシュの「港の女」も知ることが…

ヴィクトル・シェストレム「風」-メロドラマ×西部劇×ホラー

風 The Wind ヴィクトル・シェストレムとリリアン・ギッシュが組んだ伝説的な作品。 リリアン・ギッシュにとっても、D.W.グリフィスの諸作品やキング・ヴィダー等の作品を含めた最高傑作の1本ではないでしょうか。この作品のリリアン・ギッシュはとにかく、可…

蓮實重彦のオールタイムベスト①

9項目●代表作 ●「映画狂人、神出鬼没」 ・作家別ベストリスト133本 ※・101本目 ・他ページ・“折れた”・不覚にも泣いた ・ベストに入れたかったその他 ●「アクション映画ベスト50」 ・その他日本映画10本 ●「西部劇ベスト50」へ 「黄金の馬車」より 9項目 ●代…

「浪人街(1928年)」-不完全でも魂が震える“一瞬”の数々

マキノ正博(雅弘)が1928年に完成させた幻の傑作「浪人街」。 公開当時は、全三篇からなるシリーズものでした。後年リメイクされる「浪人街」は総て「第一話 美しき獲物」がベースになっているようです。現在販売されているDVDは、「第一話 美しき獲物」…

映画史的に重要な作品50本-アクションの系譜

●概要 ●サイレント(短編) 5本 ●サイレント(長編) 10本 ●トーキー以降(第二次世界大戦以前) 10本 ●第二次世界大戦後~ヌーヴェルヴァーグまで 15本 ●ヌーヴェルヴァーグ以降 10本 ●概要 ここに挙げるのは、映画というジャンルが生まれてから今日まで重要なア…

「十字路の夜」-フィルム・ノワールの誕生

十字路の夜 La nuit du carrefour フリッツ・ラング「M」の影響をダイレクトに受けたヨーロッパ。そのフランスのジャン・ルノワールが完成させた「十字路の夜」。 1時間15分の中篇となっていますが、本来は1時間30分以上ある作品らしく、欠落した部分がある…

映画本 オススメベスト10

●オススメ10冊 ●その他9冊 映画に関する本を何から読めばいいか・・・と迷ってる人向けのページです。 ●オススメ10冊 たかが映画じゃないか 山田宏一/和田誠 「映画を何から見れば良いか」と迷ってる方に送る1冊がコレ。 たかが映画、されど映画。ただ純粋に…