「ピロスマニのアラベスク」-パラジャーノフの短編


ピロスマニのアラベスク
Арабески на тему Пиросмани/Arabeskebi Pirosmanis temaze

19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したナイーヴ派の天才画家・ニコ・ピロスマニへのオマージュを捧げたセミ・ドキュメンタリー。
グルジア(ジョージア)に生まれたこの画家は、同じグルジア(ジョージア)出身のセルゲイ・パラジャーノフによってスクリーンに姿を蘇らせる。
「火の馬」ざくろの色」などロシアとグルジア(ジョージア)の世界観が融合した独特の映像で人々を虜にしてきたパラジャーノフ
特にパラジャーノフの短編は、その世界観が凝縮された濃厚な密度。
「ピロスマニのアラベスクは、そんなパラジャーノフの最高傑作の一つだと私は思っています。

グルジア(ジョージア)の人々の生活を素朴な絵柄で描き続けたピロスマニ。放浪生活の後に孤独な生涯を閉じた彼の生き様を、パラジャーノフは時間と空間を捻じ曲げるような強烈なタッチで描く。

ファーストシーンは、パレットに絵の具を付ける手が映し出される。
その後、彼の作品の絵と、その絵の世界に住む人物たちを実写で俳優が演じていく。次々と撮られる写真、現像されるピロスマニの肖像。絵と実写、二次元と三次元が交互に映されていく。
人物を演じる女優陣の美しさ・・・それを眺めるだけでも素晴らしい。

セリフを極力拝し、映像のみで総てを語る演出はざくろの色」に通じます。今回は短編という、時間と格闘するような切迫感。
歴史、宴、戦争、自然、動物・・・彼が描く“眼”には、寂しさや怒りといった様々な感情が宿っているようです。

クライマックスで、草原に立てられた扉の中に消えていくピロスマニを思わせる画家。彼の横で踊る美しい女性は、ピロスマニが想いを寄せたフランスの「女優マルガリータなのでしょうか。