ジョン・フォードの短編2本

ジョン・フォードがジャック・フォード名義の時代に撮った短編を2本紹介。
 
インディアンの郵便(By indian post)

ジョン・フォードがジャック・フォード時代に撮った短編。
フォードが初期に撮った短編はフィルムが散逸してしまった物も少なくありませんが、コレは複数残る貴重なフィルムの一つです。
 
終始コミカルでリズムの良い西部劇。
最初はカウボーイが馬の世話をしたり痴話喧嘩をする場面から始まる。やがてカウボーイたちが寝ている間にインディアンが服や銃をこっそり奪ったり、それを追って追跡隊が結成されたりとドタバタ。最初インディアンの仕業と知らずに、仲間を疑い部屋の中で暴れまわる姿が滑稽です。
しかし、この騒ぎはインディアンとある男が仕組んだ“郵便”だった。
協力者であるインディアンの“愛のキューピッド”が盗み、その知らせを受け取った主人公が他の連中が捜索でいない間に許されぬ結婚を成就させようとするのです。
ヒロインと主人公は恋中みたいなもんですが、その父親?が悪い奴でさあ大変。冒頭で主人公と揉めていたのもこの男です。
花嫁に求婚し神父を探し出して「正当な」結婚式をする事に。
が、神父は例の父親と一緒の家にいるときました。
主人公とその相棒は侵入して神父を連れ出し、相棒が引き付けている間に主人公たちは結婚式を済まそうとする。相棒が良い奴すぎます。
2階から柱をつたって乗馬するシーンや、窓や塀でのやり取りが面白かったです。
 
野人の勇(just pals)
ジョン・フォードがジャック・フォード名義だった頃の短編。西部劇というよりは現代劇に近いです。
ストーリーは街でやっかい者扱いされているビムと、孤独な少年ビルが出会って共に数々の苦難を乗り越えてみんなに認められるという典型的な話。
ビムとビル・・・似たような名前で紛らわしい。
面倒臭いので「ビムおじさん(青年だけどビル少年にとってはおじさんみたいなもの)」「ビル少年」で統一したいと思います。
ストーリーにコレといったひねりはありませんが、フォードらしい暖かみのある人情ドラマとリズムの良い内容で中々楽しめます。
ビムおじさんが恋するメアリー先生が可愛い。
ビムおじさんがワケあってニワトリを殺そうとする場面でビル少年がそれを止めるシーンとか、
ビムおじさんがビル少年を宙ぶらりんにしたり、
ビル少年が気になる女の子に穴のあいた靴下を見られてソッポを向かれてしまうちょっぴり切ない場面とか、
ビル少年がビムおじさんを養おうと止まっている列車から機関士の服を盗んでしまい、降りようとする直前に列車が動き出し、ビル少年は飛び降りて怪我をしてしまう。必死に叫びながら追いかけてきたビムおじさんは「俺のせいでビルをこんな目に遭わせちまった」と自分を責める場面とか色々工夫を感じられるシーンが多い。
ソレに終盤の馬のスピード!
サイレント映画特有の早回しを逆手にとった猛烈な疾走感。
フォードが駅馬車において出した馬のスピードとはまた違った味わい。この辺はD.W.グリフィスの影響も感じられます。

ビムおじさんが無実の罪を着せられ、身の潔白を証明しようと群衆を跳ね除け繋げてあった馬を強奪して逃げる場面も良い。
鉄の馬(車)vs馬による強盗団との競争、ビムおじさんを助ける保安官のおっさん、クライマックスで“本当の家族”をそれぞれ見つける子供たち。

木の穴からじいさんが顔を出した時は爆笑してしまいました。どうやってそこ入ったんだよ・・・。