キング・ヴィダー「剣侠時代」-剣戟映画の傑作

剣侠時代
Bardelys the Magnificent
★★★★(傑作)

キング・ヴィダービッグ・パレードラ・ボエーム等サイレント時代にとんでもないレベルの傑作が多いですが、冒険活劇でもズバ抜けて面白いのが1本、コレです。

※以下、激しいネタバレ


1926年にアメリカで公開されたこの映画。
ストーリーはシンプルな勧善懲悪・王道もの。シンプル・イズ・ベスト。フィルムは失われた部分も多いのですが、それでもスチール写真などでかなり補完されています。
ラオール・ウォルシュ「港の女」セルゲイ・エイゼンシュテイン「ベージン平原(ベジン高原)」でもそうでしたが、日本はスチール写真すら現存が少なすぎます。もっと残っているスチールをフルに使って貰いたいです。「忠次旅日記(忠治旅日記)」だってスチールいっぱいあるのに・・・。
おっと、話が反れてもうしワケありません。話を戻したいと思います。

フランス王であるルイ13世がラブダン(ライオネル・バリモア)の娘であるロクサラヌ姫(エレノア・ボードマン)の下に臣下を使わせる。コレは姫と結婚すればその莫大な財産、加えてラブダンの勢力を手中に収めようとする目論見でした。
部下のシャテルロー(ロイ・ダルシー)は困難だと進言しますが、バルドリス(ジョン・ギルバート)は三ヵ月以内に約束を取り付けると言い出します。「姫の心を捕らえてみせる」と。
シャテルローは「やれるもんならやってみろ」と己の領地を総て賭けてしまうのです。

そこからバルドリスの波乱に満ちた旅のはじまりです。
変装して宿を求めたり、変装した人間がお尋ね者で大慌てだったり、偶然か必然か、運命はバルドリスを導く。
何と逃げ込んだ先はロクサラヌ姫の住む場所だった!何という御都合主義。

そこから二人は徐々に距離を詰め、結ばれてくのですが・・・特に二人が急接近する場面の美しさといったら。

ジョン・ギルバートがエレノア・ボードマンと船の上で二人っきりになるシーン。
木漏れ日の暖かさ、空気の静けさ、水の冷たさ。川のせせらぎが聞こえてきそうな・・・そんなロマンチックなワンシーン。一種神秘的な雰囲気が画面を包み込んでいるんですよ。船の上に男女が二人っきりでいるというだけで成立するエロティシズムと言いますか。数多くのメロドラマを手掛けたヴィダーらしい場面です。

結ばれたかと思いきや、運命は二人は引き裂きにかかります。
バリモアが名乗った名前は、さっき変装したお尋ね者の名前。バルドリスは獄に繋がれてしまいます。バルドリスは自分の身元を知るシャテルローに裁いてもらいたいと言います。
シャテルローに会えば、自分の正体も任務も把握してもらえる。
しかしそれは同時に、シャテルローの賭けが“負け”である事を証明をする事にもなります。

シャテルローは「バルドリスは己の正体を偽った」としてその罪を問い、彼を殺そうとします。
ですが、バルドリスも諦めません。ココからが凄いですよ。

極めつけは城内に設置された処刑場での大立ち回り!

フランス王ルイ13世の行列が近づく中、バルドリスは最後の力を振り絞り一瞬の隙を付いて兵士から逃れ、大乱闘!
剣をかわし、槍ぶすま(槍が重なった瞬間)を踏み台にしてどんどん上へ上へと駆け上がる!
上に行ったかと思ったら下へ、そうかと思えばまた上へとヒョイヒョイヒョイヒョイ。
ハルバートで棒高飛びとはっ!そのハルバートをピッケルがわりにして階段に引っ掛けて上へ上へとまた登りつめる。そしたら今度はカーテンでターザンと来たもんです。おいおい、カーテンでパラシュートは無茶っすよ(笑)

さて、危機を脱してロクサラヌの下に駆けつけるバルドリスですが、何とロクサラヌはバルドリスの助命と引き換えにシャテルローと無理矢理結婚させられていたのです。

バルドリスは、ロクサラヌをめぐってシャテルローに一対一の決闘を申し込む。

愛する女性を賭けた激しい一騎打ち、死闘の末にバルドリスはシャテルローを討ち倒します・・・!
こうして二人は結ばれ、物語はハッピーエンドとなるのでした。

アラン・ドワンの映画やエロール・フリン主演の剣戟ものも面白かったですが、ヴィダーのこの作品は一番好きな映画です。