犬塚稔が語った映画

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影法師(江戸怪賊伝 影法師)より

全4項目

●代表作

映画&TVドラマ脚本座頭市シリーズ、
「不知火検校」
TVドラマ脚本銭形平次(大川橋蔵 版)
映画監督「元禄快挙余譚 土屋主税 雪解篇」
 
三隅研次森一生勝新太郎といった監督たちの下で脚本家、映画監督、著作家等で活躍した犬塚稔が影響を受けた・語った・好きだった映画。

●著作「映画は陽炎の如く」で語った主な映画15本+2監督

影法師(江戸怪賊伝 影法師) 二川文太郎 他…マキノ省三(牧野省三)/寿々喜多呂九平。時代劇、盗人、アクション。この作品で阪東妻三郎に傾倒したそうです
雄呂血 二川文太郎 他牧野省三(マキノ省三)/寿々喜多呂九平/阪東妻三郎。時代劇、アクション、リアリティ溢れる殺陣と殺し合い。阪東と会った際に見たと語ったそうな
異人娘と武士 井上金太郎 他牧野省三(マキノ省三)/阪東妻三郎。明治、人種を超えたロマンス、アクション。上に同じ。フィルムは現在行方不明
プロテア ヴィクトラン・ジャッセ…犯罪、スパイ、連続活劇。フィルムは約20分現存
鉄の爪 ジョージ・B・サイツ他…パール・ホワイト/エドワード・ホセ。冒険、連続活劇。フィルムはシリーズのうち7番目のエピソードのみ現存
名金(金貨のかけら) フランシス・フォード…ミステリー、冒険、連続活劇
ファントマ ルイ・フイヤード…連続活劇、犯罪、残忍さ
 
「江戸怪賊伝 影法師」のフィルムは前・後篇を合わせた総集篇が現存。ただしソフトによって結末部分が違う
 
阪東妻三郎とは「開化異相」等で組むことに。
本著では「闇」を中心に撮影時のトラブルや思い出についても言及
犬塚作品のハードな撮影は25分現存する「開化異相」における土砂降りの雨の中での死闘からも伺うことができます
 
・その他映画関係者
猪俣勝人…交誼(交友)を深めた脚本家の一人
白井信太郎…犬塚が世話になった松竹の重役・プロデューサー
衣笠貞之助…共同脚本として参加した「狂つた一頁」について、衣笠の熱意“だけは”は買うそうす
 
※実際、全盛期の衣笠と仕事を共にした犬塚にしてみれば、前衛(傾向映画)に傾倒する前の衣笠作品の凄さ(淀川長治たちが魅せられた)は知っていたのでしょう。
残ったから貴重なのであって、作品としては以前の衣笠ほど優れていないと思っていたのかも知れません
 
※衣笠の著作「わが映画の青春」についても、白井たちが制作を助けたことが抜けていると批判的でした
 
長谷川一夫(林長二郎)が切られた事件、東宝移籍時のトラブルについても衣笠たちをdisりながら苦々しく言及。とにかくこの本、犬塚の怒りがところどころで爆発
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・不明
天馬…フランス映画、幼い頃(1901年生まれなので恐らく1904年~頃)にヴァイタスコープで上映をしていたものを見たそうです
 
「天馬」についてですが、ドイツのハリー・ピール(Harry Piel)が1910年代に監督した「天馬(原題:ペガサス?)」という作品があります(「松竹8mmライブラリー 日本映画史 前編」に収録された断片には大正3年(1914年)の記述)。
邦題は「天馬」ですが原題と思われる「Pegasus」に相当する単語で検索しても情報が出ませんでした。
ピールの犯罪映画となるとブラウン探偵(Detektiv Braun)が活躍する活劇は1913年「人とマスク(Menschen und Masken)」、
あるいは映画の郷(https://hans-egede.org/2020/01/18/1921-katsudou-no-sekai-july-issue/)様のサイトで言及していた1914年「ブラウン・ビースト(Die braune Bestie)」の可能性が
 
いずれも、
主演:ルドウイツヒ・トラウトマン(ルートヴィッヒ・トラウトマン/Ludwig Trautmann)
制作:ヴァイタスコープ社(Vitascope-Atelier/Studioaufnahmen)
 
上記の「ヴァイタスコープ社」は会社名で、1900年代初頭に上映用に使われた機材「ヴァイタスコープ」とは無関係
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「元禄快挙余譚」以降

姿三四郎 黒沢明(黒澤明)…スポーツ・柔道、アクション。いわく何でもいいので『まずもって黒沢(黒澤)の映画を見よ』とのこと
風と共に去りぬ ヴィクター・フレミング他…ジョージ・キューカー。恋愛、歴史・戦争。『映画が持つ底知れない甘美』を味わえる作品の一つとして
赤い風車(ムーラン・ルージュ) ジョン・ヒューストン…伝記、画家。脚本家出身の名匠が撮った作品として
白鯨 ジョン・ヒューストン…歴史、海洋冒険、捕鯨。上に同じ
森一生…犬塚の下で助監督として学ぶ。「不知火検校」の監督
 
座頭市物語以降
サンダカン八番娼館 望郷 熊井田中絹代の演技に感極まったそうな
影武者 黒沢明(黒澤明) 他
乱 黒沢明(黒澤明) 他
 
「黒船」についてジョン・ヒューストンがロケに来た際、犬塚が日本側のシナリオの相談相手として選ばれた話、ジョン・ウェインとの思い出、犬塚たちの意見を聞かずにズサンな脚本のまま制作してしまったヒューストンに呆れ、作品の出来の悪さに改めて『シナリオこそが映画の根幹である』ということを思い知らされたそうです
 
座頭市シリーズで組んだ勝新太郎について、本著にも収録された「罰あたり座頭市のシナリオを交えつつ、勝との対立が深まり裁判沙汰になった話、勝たちの不誠実さにも色々怒りをぶちまけていました
 
※脚本家出身で脚本の重要性を尊重する黒澤についても思うところがあったようですが、その黒澤でさえ晩年は脚本家たちを軽視しているのではと釘を刺していました
 
・小説4冊
無名作家の日記 菊池寛
ふところ手帖 子母沢寛…の座頭市物語から着想を得て勝新座頭市が誕生
新選組始末記 子母沢寛...は子母沢への怒りが爆発した際に本棚の子母沢作品諸作と共に焼き捨てたとか。最早ただの八つ当たりでは...?
 
・戯曲9作
光の門 ロード・ダンセニー(ロード・ダンセイニ)
ラシヤメンの父 鈴木泉三郎
お夏清十郎 真山青果…惚れ込み映画化
屋上の狂人 菊池寛
マクベス ウィリアム・シェイクスピア『科白の妙味を知ったが、何となく馴染めず』とのこと
ハムレット ウィリアム・シェイクスピア
ロミオとジュリエット ウィリアム・シェイクスピア
 
・脚本2冊
聖人か盗人か 大須賀豊…手元に残る父親が執筆した舞台脚本として
達磨寺のドイツ人 黒沢明(黒澤明)
 
・仏典
歎異抄 河和田の唯円出家とその弟子の影響で目を通したそうです
 
・その他本4冊
世界映画史 ジョルジュ・サドゥール
パパはたばこの香り 岡本育子「私家版 パパはたばこの香り 大都映画監督・吉村操の遺族による伝記」。吉村操(岡本操)の娘が自費出版した本
私の映画回想録シリーズ 舟橋和郎「稚児の剣法」に関する記述について。書籍としては「回想の日本映画黄金期」にまとめられる
角川日本地名大辞典 竹内理三/角川春樹…の間違いに憤り「江戸町細見」を著作
 
・絵
アルフレット・シスレー(アルフレッド・シスレー)…の風景画

桂千穂「にっぽん脚本家クロニクル」より2本

ジゴマ ヴィクトラン・ジャッセ
名金(金貨のかけら)
 
・戯曲
ロード・ダンセーニ

●関連記事
円谷英二「稚児の剣法」キャメラマンの一人として参加
衣笠貞之助「狂つた一頁」
川端康成…上記共同脚本家の一人。川端のことも衣笠の共犯扱いでdisってました

座頭市シリーズ関連

勝新太郎…シリーズ主演

森一生「続・座頭市物語」「不知火検校」

伊藤大輔座頭市地獄旅」等の脚本
新藤兼人座頭市海を渡る」
岡本喜八座頭市と用心棒」
山本薩夫座頭市牢破り」
勅使河原宏…TVドラマ「新・座頭市第3シリーズ25・26話