溝口健二が影響を受けた映画


「モロッコより

代表作:近松物語」「西鶴一代女」「残菊物語」
 
映画監督等で活躍した溝口健二が影響を受けた・好きな映画。

「映画評論家 岸松雄の仕事」より
ロッコ ジョセフ・フォン・スタンバーグ…戦争、酒場の女歌手と軍人の恋愛、男装、同性愛
間諜X27 ジョセフ・フォン・スタンバーグ…女…スパイ、スリラー、戦争、脚線美
堀田隼人 伊藤大輔志波西果赤穂浪士 第一篇 堀田隼人の巻」をリメイクした時代劇。アクション、集団戦闘。本作における衣装の元禄風の線が良いという話に同感だとのこと。フィルムは現在行方不明
男達ばやり 稲垣浩…時代劇、コメディ。本作の荒っぽくて明確な衣装にも興味を惹かれたそうです。フィルムは約1時間現存
京屋襟店 田中栄三…老舗、家族、下町情緒。助監督として学んだ作品。フィルムは現在行方不明
山中貞雄…時代劇、コミカルな描写の名手。親交を深めた監督の一人
伊丹万作…時代劇、コメディの名手
キング・ヴィダー…岸が名を挙げた際、ヴィダーからの影響も認めていました
小津安二郎…小津の新しいものに挑戦していくスタイルを偉いと語っていました。実際、初期の小津はギャング映画からコメディ、恋愛と様々なジャンルに挑戦
金 マルセル・レルビエ…金融界、ドキュメンタリーめいた活写、一喜一憂する人々の欲望、細部までこだわったディティール。溝口がシネアストの映画機関誌映画生活にレビューを書いた作品として
 
旅の女芸人 鈴木謙作表現主義の流れを汲むものの、リアリズムを追求した悲恋もの。「敗残の唄は悲し」への影響について。フィルムは現在行方不明
人間苦 鈴木謙作…リアリズムに徹した浮浪者と裕福な者が繰り広げるドラマ。「夜」への影響について。フィルムは現在行方不明
朝から夜中まで カール・ハインツ・マルティン…ドイツの表現主義を代表する作品。本作を始めとする作品群に影響を受けて「血と霊」が企画されたことについて
カリガリ博士 ローベルト・ヴーィネ/カール・マイヤー/フリッツ・ラング…上に同じ
路上の霊魂 村田実…幽霊。日本におけるホラー映画の原点の一つ。村田は「現代の女王」等で脚本家として溝口と組んだこともある存在。溝口は後にホラー映画狂恋の女師匠」を監督。海外に初めて輸出された日本及び和製ホラー(もしかしたら最古のJ・ホラー?)映画の一つとして映画史に名を刻むことに(フィルムは現在行方不明)
 
・その他
内藤耕二郎…心理学を研究していた大学教員。内藤とは友人だったらしく、彼の「映画で臭覚や触覚を表現できないか」といった研究等に多大な影響を受けたそうです。溝口のワンシーン・ワンカットへのこだわりは彼と交流する内に芽生えたそうです
小栗美二…日活の映画美術スタッフ
伊藤深水…浮世絵師、画家、版画家
おりき 久保田万太郎…戯曲。樋口一葉にごりえを脚色した作品
オスロまで( オスロまでの百余時間) 久保田万太郎…小説
大仏開眼(大佛開眼) 長田秀雄…戯曲。映画化してみたかったそうです
夫婦善哉 織田作之助…小説。やりたかった作品として。織田は親しかった作家の一人であり、彼の早すぎる死を嘆いていました
名工柿衛門 尾上菊五郎(6代目) 他…歌舞伎の舞台。尾上の“映画的(写実的)な演技”を見せてもらったそうですが、尾上以外の俳優が歌舞伎的な演技だったためにバランスが悪いと苦言を申したそうです
 
※溝口は映画における衣装について、元禄模様の豪放さが好きだったそうです
 
溝口いわく「山中と伊丹が死んでから時代劇は潰滅したのじゃないか」と言って映画作家たちが集まった席上で大問題になったそうです。あと伊藤大輔衣笠貞之助を引っ込み思案すぎるとdisり川口松太郎ですら本統の時代劇を作ろうという気にはならないと語っていました。
実際、戦前に第一次黄金期を迎えた時代劇は第二次世界大戦による混乱、戦後のGHQの政策で意欲的な作品を撮れない時期が続きました。
GHQの政策が終わった後、溝口健二黒澤明といった映画人が時代劇の傑作を撮りまくり、時代劇は再び第二次黄金期を迎えていくことになります

佐相勉による編集溝口健二著作集」より
紐育の波止場 ジョセフ・フォン・スタンバーグ…労働者、恋愛、犯罪、女たちのドラマ
京屋襟店 田中栄三
流転 伊藤大輔…時代劇、アクション。この頃の伊藤大輔の腕にも一目置いていたものの、作品のニヒリズムには否定的だったようです。フィルムは現在行方不明
長恨 伊藤大輔時代劇、アクション。フィルムは現在行方不明
マキノ正博(雅弘)&山上伊太郎…時代劇、アクション。一目置いていたようです
ルネ・クレール
セルゲイ・アイセンシュタイン(セルゲイ・エイゼンシュテイン)
早春 ラインホルト・シュンツェル…結婚、母娘、霧、犯罪
コンドル ハワード・ホークス…航空映画、スリリングなやり取り、ユーモア、女たち
駅馬車 ジョン・フォード…西部劇、アクション、異文明との衝突、女たち
 
※溝口は駅馬車に先駆けギド・モーパッサン「脂肪の塊」「マリヤのお雪」として翻案していました
 
路上の霊魂 村田実…賛辞を贈っていました
ルイ・ジューヴェ…の出演作
西部戦線一九一八 G.W.パプスト…筈見恒夫が本作について言及した際、当時のドイツの状況を振り返りながら。本来「誓いの休暇」について語り合う筈の場で本題そっちのけで
科学者の道 ウィリアム・ディターレ参考になる伝記映画として
阿部一族 熊谷久虎…の方言について
オーケストラの少女 ヘンリー・コスター…のシナリオを褒めていました
毒薬と老嬢 フランク・キャプラ
イヴの総て ジョセフ・L・マンキーウィッツ
美女と盗賊 木村恵吾
羅生門 黒澤明/宮川一夫…かなり評価しているようでした。戦後にGHQの制作によって一時期殺陣のある時代劇が撮れず、政策が終わり再び殺陣あり何でもありの作品を撮れるようになっていた時期の作品だけに、黒澤たちのエネルギーに溝口も刺激を受けたことでしょう
 
赤と黒 クロード・ルルーシュ
長い灰色の線 ジョン・フォード
清水宏…親交の深かった監督の一人
探偵物語(刑事物語) ウィリアム・ワイラー…この映画は気に入ったそうです
陽の当たる場所(陽のあたる場所) ジョージ・スティーヴンス
 
・戯曲
アルト・ハイデルベルヒ(アルト・ハイデルベルク) ヴィルヘルム・マイヤー=フェルスター

●中古智&蓮實重彦成瀬巳喜男の設計」より
人でなしの女 マルセル・レルビエ
 
※中古智の話によると、久保一雄たちから「血と霊」制作時の話も聞いたそうです

依田義賢が好きな映画
脚本家として溝口と幾度も組んだ依田が影響を受けた映画
 
桂千穂「にっぽん脚本家クロニクルより
ロッコ ジョセフ・フォン・スタンバーグ…口述筆記の訓練をするために三十回は見たそうです