●概要
「ルパン三世」…日本をはじめ世界を股にかけ繰り広げられる殺し合い、ユーモア、エロティック、全力疾走で華麗に盗んで殺って奪い去る無国籍アクションの傑作。
大泥棒、
凄腕ガンマン、
何でも叩っ斬る剣豪、
敵にも味方にもなるファム・ファタール(悪女)、
それを追い続ける鬼警部。
悪党が悪党をブチのめし己の信念を貫くダークヒーローの、時に敵味方が共闘しより巨大な悪を粉砕する痛快さ。
かつてこれほど愛され、これほどキャラクターの顔と登場人物の性質が変わりまくり、ファンを大いに困惑させたアニメがあったでしょうか。
それくらい個性と個性がぶつかり、主張し、突っ走り、殴り合いながら自由奔放に各作画監督の暴れっ振りが楽しめる作品でもあります。
作品も自在に変化するなら、色んな「ルパン」がいても何ら問題はありません。
1話完結式で繋がりがなく、その話だけの世界や面白味があるなら尚更です。
そもそもモンキー・パンチの原作からして原作がレイプ(しまくる)のヤリたい放題だわ、ルパンはキチガイだわ、不二子の名前のキャラが何人も出てくるわ、ポンポン死んだり生き返るわ、登場人物の設定もガバガバだったし何の問題もないでしょう(暴論)。
全6ページに分けてリストアップ。
●「パイロット・フィルム」作画・原画を手掛けた主な2名
芝山努
石川五ェ門(五ヱ門)。色黒
銭形警部(銭形幸一)
モンキー・パンチの原作を髣髴させる雰囲気、得意のユニークな絵柄からキレのあるアクションを炸裂させパンチを唸らせる。
この頃から原作と違い女の子みたいな美少年に描いてもらえない五ェ門。
次元は原作同様、眼の露出が多い。
フィルムの一部が「1st」OP2にも流用。
「ルパン三世 ルパンVS複製人間」においてもレイアウトをすべて手掛ける。
「ド根性ガエル」の動きまくる高度な作画で腕を競い合い、劇画「巨人の星」では大塚がOP原画、芝山が本編で原画及び作画の一人として活躍。
杉井ギサブロー(杉井儀三郎)
パイロット・フィルム原画
虫プロ出身。
芝山と並びTVアニメ創成期から活躍するレジェンドの一人。
「ルパン三世」のアニメ化企画を熱烈に売り込んだのもこの人。
「哀しみのベラドンナ」で培ったリアルテイストとエロティシズムで妖艶な不二子のダンスを披露。
●「1st」概要
だってパンチの原作そのまま流したら速攻放送禁止レベルなくらいヤバい内容ですし(誉め言葉)。
大塚の登場人物の銃や小道具、車といったディティールへのこだわりを反映し、ルパンをはじめ次元、不二子、古風極まりない口調で出てくる五ェ門たちをさらに掘り下げる。
●「1st」作画1名
大塚康生
「1st」1話
5話。不良少年時代
1話
芝山と共にアニメ創成期から活躍した伝説の一人。
東映、Aプロ、テレコムで数々の伝説を残し、新人教育にも熱心で宮崎たちの師匠的存在。
劇場映画のフル動画からTVアニメの枚数制限下まで経験し「少ない枚数でいかに動いているように見せるか」を研鑽した人間でもあります。
「巨人の星」からそのまま参加したスタッフの一人として、劇画調ながら原作の持ち味も取り入れより洗練された絵柄を披露。
大隅の注文に応えたリアリティと色気、持ち前の柔らかいタッチと人間味・ユーモアを時折覗かせる。
何といっても大きな黒目が魅力的。みんなカッコイイ&可愛い。
次元の顔が帽子に覆われる比率が多くなるのも「1st」から。
同時に、「ルパン」シリーズで顔がコロコロ変わっても良いというスタンスを築いた人でも。
その辺のゴタゴタについて語られた「BSアニメ夜話スペシャル「とことんルパン三世」」によると、当時裏番組として「アンデルセン物語」や「ムーミン(りんたろう)」という家族で楽しめる高視聴率番組と激突する不運に見舞われ、視聴率で大苦戦を強いられます。
それをめぐり「視聴率が悪いのは作風のせいなんじゃね?」と方向転換を迫る藤岡と「作風変えれば売れるって保証がどこにある」と大隅が対立。
ブチ切れた大隅は3話にして何の相談もなく自ら現場を降りてしまったそうな。
いや責任取るにしても大塚には言っとけよ...。
宮崎たちも師の頼みとあって断れず「Aプロダクション演出グループ」のクレジット表記で引き受けます。
前述したように前半は大隅テイストで徐々に方向転換していき、後半14、16話(15話は一旦ロングに戻る)からは、
●「1st」14話以降
14話
不二子がボブカットで露出もほとんど無くなりお色気を封じられることに。
何もかも藤岡が悪い(八つ当たり)。
その代わり色気を売り物にしない、自ら軽飛行機や車を乗り回し猛然と目的のために突き進むパワフルな女性に。
しかし16話のドレス姿は良いですよ~。
東映時代に大塚&宮崎が得意としたコミカルかつドタバタのアクションに次ぐアクション路線で巻き返しを図り、視聴率は多少持ち上がり20数話まで放映できるくらいにはなったようです。
が、やはり裏番組は強すぎた。
その後再放送が繰り返される度に人気が出て再評価も進み、大隅たちの考えが間違っていたのではなく相手が悪いだけだったということが証明されていきます。
同時に後半のコミカルな「ルパン」も受け入れられ、「2nd」は大隅のハードさと色気+宮崎たちのコメディ路線の良いとこどりで親しみやすいものになっていきます。
後に大塚は藤岡が創立したテレコム・アニメーションフィルムで若手の指導役として一線を退く。
しかし、その後人手不足から原画や作画も再び手掛けまたも伝説を残すことに…。
「2nd」145話「死の翼アルバトロス」原画。大塚走り
●「カリオストロの城」作画
誰てめ絵(特に不二子)。
銭形がやたらカッコイイのは銭形大好きな友永和秀の影響もあったりするのでしょうか。
「1st」初期のギラギラした女大好き!人殺し上等!なルパンたちと比較すると、年齢を重ねて成熟しちゃった?感じ。いくら何でも変わりすぎなんじゃ…。
まあ大塚にしてみれば大隅(無責任野郎)、藤岡(路線変更要求魔)、「2nd」は鈴木清順(映画会社社長に「テメえの映画分けわかんねんだよ」と言われクビになった経験あり)たり、変わるなという方が無理なくらい問題児だらけ。
それでも初期から関わったアニメーターとして意地でも現場で踏ん張り続け、路線変更という制約の中で大塚たちなりに模索しアニメーターとして己の信念を貫いた姿勢は立派です。
だからこそ長年親しまれる「ルパン」が生き残ったと言えるでしょう。
でも不二子ちゃんだけは初期のエロエロ小悪魔ver.でやって欲しか(ry
その辺の話は「作画汗まみれ」や「出発点―1979~1996」等でも語られています。
●その他原画17名一覧
小林治(小林おさむ)
「1st」1話原画
芝山と共に亜細亜堂を設立。
パイロット・フィルムにも原画として参加。
今作でも原画として実力を存分に発揮し大塚と共に芝山・杉井の代わりを果たす。
1話で不二子をくすぐるエロマシーンや5話の畳替えし等は小林の仕事。
他作画は芝山・大塚と組み近藤喜文や百瀬義行らも参加していた「ド根性ガエル」、チーフディレクター「魔法の天使クリィミーマミ」等。
5話原画
1話からノンクレジットでカーレース場面、5話の高速道路における決闘とアクロバティックな動きで魅せまくる。
原画として本作のアクション面を支え大塚にも認められ実力者に。
「ルパンVS複製人間」にも参加。
そのパワーは凄まじく特に「2nd」では作画にも強い影響を与えるほどで北原健雄が修正を諦めた一人。
なお「PARTⅢ」でも大暴走の模様。
河内日出夫
5話原画
Aプロから亜細亜堂にかけて活躍する腕利きの一人。
本作では原画として5話の五ェ衛門初登場となる傑作回の凄まじい殺陣をはじめ、とにかく五ェ衛門活躍回で動きの切れ味が鋭いのはこの人の仕事。
他総作画監督「魔法の天使クリィミーマミ」、作画「忍たま乱太郎」等。
木村圭市郎(木村圭一郎)
3話原画
今回はネオメディアを率い山口、才田、村田らと共に参戦。
3話の殺し合いをはじめ各話で激しいアクションをこなす。
特に11話「七番目の橋が落ちるとき」(これも傑作回)は青木らと共に暴れまわりクライマックスで強烈な水上スキーを炸裂させる。
2話原画
ネオメディア組。
2話(大和屋竺脚本の最高傑作回)における次元の鮮やかな拳銃捌きは恐らくこの人の可能性大。
4話の静かなようで激しきこれまた傑作回にも参加。
他作画「タイガーマスク」「家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ 」等。
ところで2話を見てもお分かりだと思いますが、次元は右手でも左手でも寸分たがわぬ正確な射撃が出来る男です。
5話で二挺のマグナムをわざわざ右手に持ち替えたり(「殺しやしない」という舐めプ前提だからか二挺目を右手に持ち替える“瞬間”すら与えて)、
9話で左手じゃ様にならないワケが無いんですが...。
この頃からアニメ「ルパン」の設定もガバガバ(ry
宮崎駿(照樹務/秋津三朗)
9話原画
今回もアクションのキレは申し分無く、ノンクレジットながら9話の一瞬の逃走劇・花瓶を粉砕する一撃、15話の銭形の爆走等大胆な動きが面白い。
しかし演出としては高畑たちと苦戦を余儀なくされることに。
試行錯誤を繰り返す内に大隅、出崎以上の原作デストロイヤーとなりやりたい放題することに。パンチ涙目。
色々アイデアを出しまくり宮崎なりの「ルパン」を模索しようとしていました。普段は貧乏くさくひょうきん、しかしやる時はやるプロフェッショナリズム。
その後「アルプスの少女ハイジ」の徹底したリサーチによる緻密なディティールと空間描写、大塚と組んだ「未来少年コナン」で冒険活劇を極め傑作「カリオストロの城」へと繋がる。
ただ「赤毛のアン」でクソ忙しい時に大塚から助っ人を頼まれ、時間も予算も限られた状況。
パヤオ「俺アン好きじゃないから降りるわ」
高畑「ファッ!?」
パヤオ「あと映画作るのに人手いるから貰うね」
高畑「!!?」
「アン」のクオリティ維持が困難になりかけ高畑マジ切れ、宮崎はそんなことお構いなしで現場に突撃、鈴木たちが書いた分けのわからん脚本をチラ見しただけでそれっきり、数か月でイメージボード→脚本→制作をこなした模様。
近藤喜文(近藤善文)
21話原画
今作は原画陣の一人として5話、特に21話は列車の大暴走を手掛ける。
朝倉隆(後「ルパン三世 2nd」の作画を支える存在に)、
才田俊次(作画(原画)「アルプスの少女ハイジ」、キャラデザ及び作画「小公女セーラ」等)、
本多敏行(「怪物くん(福富博)」「一球さん(福冨博)」等)、
今沢哲男(シリーズディレクター「六神合体ゴッドマーズ 」、共同監督「キン肉マン」等)、
箕輪宗廣(キャラデザ「ゼロテスター」等)、
●その他動画2名
高畑順三郎(原画として「ルパン三世 2nd」のアクション面を支える)、
前田実(キャラデザ&作画「Dr.スランプ アラレちゃん」、「ドラゴンボール」シリーズ等。後「トワイライト☆ジェミニの秘密」のキャラデザ&エンディング作画を手掛ける)。
参照:「『ルパン三世』の映画的面白さの源泉」