「タイガーマスク」-作画比較①

●概要

タイガーマスクは、東映動画が1960年代末期~1070年代初頭にかけ日本アニメ界に叩きつけた血と汗の結晶。
 
プロレスを題材に屈強な野郎共がリングという四角いジャングルを走り回り、宙を飛び交い血しぶきをあげ、吹き荒れる暴力、時にルール無用と言わんばかりにレフェリーまでブチのめし、凶器を繰り出し襲い掛かる!!
 
情け容赦ない悪役レスラー養成機関「虎の穴」、そこから生まれたタイガーマスクが数多のレスラーを血の海に沈め悪逆の限りを尽くす!!…と思いきやある事件をキッカケに蘇るかつての記憶、葛藤、自問自答、取り戻していく魂。
そのギャップがたまらない。
 
そんなタイガーを“裏切者”として抹殺すべく「虎の穴」で育った同門たちが襲い続ける死闘の日々。
また彼を巡って当時の社会問題にまで踏み込み、いわゆるスポ根アニメの枠に収まりきらない凄味に溢れています。
 
梶原一騎辻なおきの原作からして血生臭いものでしたが、アニメはよりハードな作風へ。
辻真先や安藤豊弘といった脚本・それを描く荒くれアニメーターたちがパワフルかつクレイジーなものにしごきあげる。
 
そんな本作を描き抜いた主なアニメーターたちを2ページに渡り紹介。

●主な作画監督10名

木村圭市郎
若月ルリ
7話。ミスターX
 
個性剥き出しで殴りまくる武闘派アニメーター。
原作上等・絵コンテクラッシャー。
金田伊功に先駆けた少ない線画だから出来る動かしやすさ、極端なパース(遠近法)付けによって映える破天荒なアクション。
今回はネオメディア代表としてOP作画も手掛ける。
荒々しい線画の刻まれたキャラクターたちが荒唐無稽・縦横無尽に飛び交い殴り合い血を吹き散らす。
テクニックで魅せるアニメーターでもあり、佐武と市捕物控でほぼ完成されていた睨み合う二人をぐるりと大きく回り込み、レフェリーに高速で近づき瞬く間に過ぎ去り、体を大きく揺らしながら空を切り裂く。
リングの大きさも天井の高さも自在に変え、背景も強引かつ大胆に動かして見せる。
木村回にハズレはありませんが、特に1話、7話の葛藤の果てにキメる渾身の一撃は必見。
しかしあまりに絵コンテ・演出を守らない傍若無人振りで演出陣と意見が合わず衝突を繰り返し、結果ローテーションから叩き出されリングアウト(クビ)する模様。
その後もネオメディアを率い様々な作品でアウトロー振りを発揮。
数多の弟子を育て世に送り出していきます。
他作画ドカベン、OP原画アタックNo.1等。
村田四郎
33話
 
OPの動画・1話から原画(作画)も手掛けたアニメーター、イラストレーター。
金田が木村と並ぶ天才だったと語るほどの男で、木村のアクションを裏で支えた陰の功労者でもあります。
作画回は木村風の線画の付け方ですが、さらに太く力強い線画でゴリ押しするスタイル。
33話は一人原画?もこなし木村作画回でも見せていた大きく回り込むような動きを終盤等で見せてくれます。後に劇画調の濃い作画をはじめコミカルな作品までこなす。
他作画楽しいムーミン一家」「おそ松くん(永沢詢/鈴木伸一)、小説イラスト青い鳥文庫シリーズ等。
小松原一男
6話
13話
 
月岡貞夫に鍛えられたプロフェッショナル。
東映動画の養成所チルドレンズ・コーナー出身。
OH!プロダクション(オープロダクション)の設立にも関わり、様々な作品の作画クオリティに貢献してきました。
どんな絵柄にも対応しつつ自分のものにしてしまう技量の持ち主で、木村とは対照的に職人気質で仕事をこなすプロフェッショナル。与えられたものを最大限に活かし己のものにしてしまいます。
今回は2話から原画(クレジット上では作画監督以外のスタッフはすべて“作画”表記。
恐らく最初の表示が原画、次の表示が動画にあたる担当者かと)。
作画では最終回105話も手掛ける。
木村が躍動感を出すために線を肉体に刻んだのに対し、小松原は顔の線を増やし立体的で見た目にも拘った画に。
ただ小松原回はタイガーも血まみれになる試合も多く、特に105話は枚数もたっぷりかけて地獄のような“死合”を描き抜く。
70年代の小松原は木村路線の荒々しさで始まり、徐々に線がスッキリしシャープ(鋭敏)で洗練されたものに進化していきます。
野田卓雄
96話
 
スタジオNo.1を始め数多のアニメスタジオで活躍してきた伝説の男、金田の師の一人。
独特のポーズで一撃を炸裂させる。
特に野田原画・木村作画回における大胆な跳躍は金田系譜に先駆けたアクション。
スパロボ諸作品ではダイナミックかつ鋭敏なアクションでその名を轟かせ、以後何十年に渡り高い技量を維持し活躍を続けていきます。
小松原とはゲッターロボ等で競い合いスーパーロボットものの作画をよりシャープにした仲。
タイガーマスク2世にも参加。
他作画大空魔竜ガイキング」「ゲッターロボシリーズ、原画カードキャプターさくら」「MONSTER(モンスター)等。
森利夫
3話
 
劇画調からギャグまでこなせる腕利き。
この人の回も原画も手掛け動きにキレがあって面白い。
矢吹公郎の演出もあってか光の使い方がかなりサイケデリック42話の水着回もこの人。
小松原とはデビルマンわが青春のアルカディア 無限軌道SSX」「グレンダイザー」、野田とはゲッターロボ等で作画を担った仲。「Ⅱ」の作画にも参加。
他キャラクター設計(キャラデザ)&作画キン肉マン等。
羽根章悦
12話
 
8話から原画(作画)に参加。
少女アニメからスポーツ、スーパーロボット、伝奇アクションまで多彩なジャンルで活躍。
木村の荒々しい線画も取り入れつつ、顔の線を増やし後のマジンガーZを髣髴とさせる陰影の濃い重みのある戦闘で魅せる。
他作画魔法使いサリー(飯島敬)、原画風の谷のナウシカ等。
我妻宏
29話
 
東映の長編アニメ時代から活躍するアニメーターの一人。
劇画からソフトな絵柄までこなす。
動きのキレも抜群(原画:白土武!)。88話のお買い物回もこの人。タイガーマスクⅡ世」ではチーフアニメーターに。
他キャラデザ&監修・作画一休さんゲゲゲの鬼太郎(辻真先/雪室俊一)シリーズ等。
窪詔之
15話
 
竜の子(タツノコ)プロ出身。
木村たちと共にTVアニメ黎明期から活躍するベテラン。
クセは強いもののあらゆる絵柄に対応する技巧の持ち主で息の長い活躍をすることに。
他共同作画十二国記、作画「レインボー戦隊ロビン、キャラデザ&作画たこやきマントマン等。
飯野皓
66話のみ
 
TVアニメ黎明期から活躍するベテランの一人。
特に劇画調アニメが得意。
今回は総集編ぽい回でしたが、新規作画部分はぬるっと動く悪夢めいた仕上がり。もっと普通の回でこの飯野「タイガー」を見たかったです。
他作画鉄腕アトム(石黒昇)」「空手バカ一代等。
後に東映からの命令で原画に参加していた菊地城二らと共に韓国の外注スタジオを指導するため海を渡る。正直貧乏くじを引かされたような気が...。
なお菊池の方は宇宙海賊キャプテンハーロック作画崩壊状態を死に物狂いで修正しまくりますが直しきれなかった模様。
村田耕一
2話
 
ネオメディアで木村に鍛えられた一人。
後に小松原、塩山紀生、米川功真らと共にOHプロダクションを設立。代表取締役に就任し様々な作品のクオリティ向上に貢献。
木村ほどじゃありませんがキレの良い激しいアクションが持ち味(原画に米川・小松原・白土!)。お遊びで同じ東映作品ひみつのアッコちゃんゲゲゲの鬼太郎のお面を描いてたのもこの人。
他作画アタックNo.1「家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ等。