●概要
プロレスを題材に屈強な野郎共がリングという四角いジャングルを走り回り、宙を飛び交い血しぶきをあげ、吹き荒れる暴力、時にルール無用と言わんばかりにレフェリーまでブチのめし、凶器を繰り出し襲い掛かる!!
情け容赦ない悪役レスラー養成機関「虎の穴」、そこから生まれたタイガーマスクが数多のレスラーを血の海に沈め悪逆の限りを尽くす!!…と思いきやある事件をキッカケに蘇るかつての記憶、葛藤、自問自答、取り戻していく魂。
そのギャップがたまらない。
そんなタイガーを“裏切者”として抹殺すべく「虎の穴」で育った同門たちが襲い続ける死闘の日々。
また彼を巡って当時の社会問題にまで踏み込み、いわゆるスポ根アニメの枠に収まりきらない凄味に溢れています。
そんな本作を描き抜いた主なアニメーターたちを2ページに渡り紹介。
●主な作画監督10名
木村圭市郎
1話。タイガーマスク
7話。伊達直人
若月ルリ
7話。ミスターX
個性剥き出しで殴りまくる武闘派アニメーター。
原作上等・絵コンテクラッシャー。
金田伊功に先駆けた少ない線画だから出来る動かしやすさ、極端なパース(遠近法)付けによって映える破天荒なアクション。
今回はネオメディア代表としてOP作画も手掛ける。
荒々しい線画の刻まれたキャラクターたちが荒唐無稽・縦横無尽に飛び交い殴り合い血を吹き散らす。
テクニックで魅せるアニメーターでもあり、「佐武と市捕物控」でほぼ完成されていた睨み合う二人をぐるりと大きく回り込み、レフェリーに高速で近づき瞬く間に過ぎ去り、体を大きく揺らしながら空を切り裂く。
リングの大きさも天井の高さも自在に変え、背景も強引かつ大胆に動かして見せる。
木村回にハズレはありませんが、特に1話、7話の葛藤の果てにキメる渾身の一撃は必見。
その後もネオメディアを率い様々な作品でアウトロー振りを発揮。
数多の弟子を育て世に送り出していきます。
OPの動画・1話から原画(作画)も手掛けたアニメーター、イラストレーター。
金田が木村と並ぶ天才だったと語るほどの男で、木村のアクションを裏で支えた陰の功労者でもあります。
作画回は木村風の線画の付け方ですが、さらに太く力強い線画でゴリ押しするスタイル。
33話は一人原画?もこなし木村作画回でも見せていた大きく回り込むような動きを終盤等で見せてくれます。後に劇画調の濃い作画をはじめコミカルな作品までこなす。
小松原一男
6話
13話
月岡貞夫に鍛えられたプロフェッショナル。
東映動画の養成所チルドレンズ・コーナー出身。
OH!プロダクション(オープロダクション)の設立にも関わり、様々な作品の作画クオリティに貢献してきました。
どんな絵柄にも対応しつつ自分のものにしてしまう技量の持ち主で、木村とは対照的に職人気質で仕事をこなすプロフェッショナル。与えられたものを最大限に活かし己のものにしてしまいます。
今回は2話から原画(クレジット上では作画監督以外のスタッフはすべて“作画”表記。
恐らく最初の表示が原画、次の表示が動画にあたる担当者かと)。
作画では最終回105話も手掛ける。
木村が躍動感を出すために線を肉体に刻んだのに対し、小松原は顔の線を増やし立体的で見た目にも拘った画に。
ただ小松原回はタイガーも血まみれになる試合も多く、特に105話は枚数もたっぷりかけて地獄のような“死合”を描き抜く。
70年代の小松原は木村路線の荒々しさで始まり、徐々に線がスッキリしシャープ(鋭敏)で洗練されたものに進化していきます。
野田卓雄
96話
スタジオNo.1を始め数多のアニメスタジオで活躍してきた伝説の男、金田の師の一人。
独特のポーズで一撃を炸裂させる。
特に野田原画・木村作画回における大胆な跳躍は金田系譜に先駆けたアクション。
スパロボ諸作品ではダイナミックかつ鋭敏なアクションでその名を轟かせ、以後何十年に渡り高い技量を維持し活躍を続けていきます。
「タイガーマスク2世」にも参加。
他作画「大空魔竜ガイキング」「ゲッターロボ」シリーズ、原画「カードキャプターさくら」「MONSTER(モンスター)」等。
森利夫
3話
劇画調からギャグまでこなせる腕利き。
この人の回も原画も手掛け動きにキレがあって面白い。
小松原とは「デビルマン」や「わが青春のアルカディア 無限軌道SSX」「グレンダイザー」、野田とは「ゲッターロボ」等で作画を担った仲。「Ⅱ」の作画にも参加。
羽根章悦
12話
8話から原画(作画)に参加。
少女アニメからスポーツ、スーパーロボット、伝奇アクションまで多彩なジャンルで活躍。
木村の荒々しい線画も取り入れつつ、顔の線を増やし後の「マジンガーZ」を髣髴とさせる陰影の濃い重みのある戦闘で魅せる。
我妻宏
29話
東映の長編アニメ時代から活躍するアニメーターの一人。
劇画からソフトな絵柄までこなす。
動きのキレも抜群(原画:白土武!)。88話のお買い物回もこの人。「タイガーマスクⅡ世」ではチーフアニメーターに。
竜の子(タツノコ)プロ出身。
木村たちと共にTVアニメ黎明期から活躍するベテラン。
クセは強いもののあらゆる絵柄に対応する技巧の持ち主で息の長い活躍をすることに。
飯野皓
66話のみ
TVアニメ黎明期から活躍するベテランの一人。
特に劇画調アニメが得意。
今回は総集編ぽい回でしたが、新規作画部分はぬるっと動く悪夢めいた仕上がり。もっと普通の回でこの飯野「タイガー」を見たかったです。
後に東映からの命令で原画に参加していた菊地城二らと共に韓国の外注スタジオを指導するため海を渡る。正直貧乏くじを引かされたような気が...。
なお菊池の方は「宇宙海賊キャプテンハーロック」の作画崩壊状態を死に物狂いで修正しまくりますが直しきれなかった模様。