メモ:映画の流血描写の変遷

映画の流血描写の変遷
 
フリッツ・ラング「ニーベルンゲン」ジークフリートの怪物の目玉を突き刺し刺された傷口から流れ出る血(人間のように赤くはない)
 
戦艦ポチョムキンは撃たれた後の血
 
二川文太郎「逆流」は画面外で人を刺し刃にベットリついた血
 
「アンダルシアの犬」は剃刀で斬られた瞬間の流血
 
ジャン・コクトー「詩人の血」は引き金を引いた後に流れ出る血
 
伊藤大輔「続大岡政談 魔像 解決篇」は障子に飛び散る血痕
 
ヘイズ・コードが施行されてからのハワード・ホークス「暗黒街の顔役」は暗示描写に富むが中でもマシンガンで撃たれたビール樽から酒がピューっと吹き出る。
後の内田吐夢「血槍富士」は酒樽と槍刺殺の流血が合わさる。
ホークス映画は「赤い河」の手を撃ち抜かれる痛々しさ、リオ・ブラボーの垂れ落ちる血と被弾した証として印象的に使われる
 
ウィリアム・A・ウェルマン民衆の敵は撃たれた人間が衝撃で身を崩し画面が切り替わった後に血まみれ。
この描写はヘイズコード末期のアーサー・ペン「逃亡地帯」、コード終了後も諸作品で演出として機能する。
ゴダール気狂いピエロのペンキのように赤い血もこの系譜か
 
ルイス・マイルストン西部戦線異状なしは流血ではないが爆風で吹き飛ばされ腕だけが有刺鉄線に引っかかる
 
風と共に去りぬ」「ヴェラクルス」等は頭に弾丸が撃ち込まれたことを示す眉間の血が一瞬映る
 
アンジェイ・ワイダ灰とダイヤモンドは着弾の際の発火が血のように吹き出る
 
ジョン・フランケンハイマー影なき狙撃者は飛び散る血のみカットを割ってこびりつく。
他にも殺し屋の銃撃で牛乳が血のように噴出
 
「リバティ・バランスを射った男」は吊るされた水鉢が銃撃で破裂し更に腕で庇ったところから血がドクドク流れ出る
 
黒澤明「用心棒」「椿三十郎で斬られた瞬間に溢れ出る流血。
今作をキッカケに小林正樹切腹工藤栄一十三人の刺客」「大殺陣、山内鉄也「忍者狩り」岡本喜八大菩薩峠と人を斬った瞬間に血が出る時代劇は確立されていく
 
そしてアーサー・ペン俺たちに明日はない(ボニー&クライド)」、ペキンパーワイルドバンチ等が今までの総決算とも言うべき血・血・血の洪水でヘイズ・コードの終焉と新しい時代のはじまりを宣言する