「十字路の夜」-フィルム・ノワールの誕生

十字路の夜
La nuit du carrefour
フリッツ・ラング「M」の影響をダイレクトに受けたヨーロッパ。
そのフランスのジャン・ルノワールが完成させた「十字路の夜」

1時間15分の中篇となっていますが、本来は1時間30分以上ある作品らしく、欠落した部分があるためストートーが解り難い作品となってしまっているのです。
ストーリーを頭に入れたい方はジョルジュ・シムノンの原作である短編小説「メグレと深夜の十字路」も読む事をオススメします。

ただ、ストーリーがどうでも良くなるほどミステリアスで力強い映像の魅力。
冒頭の遺体発見のシーン、刑事たちが吸う煙草の煙が構築する退廃的な空間、男を破滅に導く女(ファム・ファタール)の登場。
加えてルノワール特有の水の音
「マルタの鷹」以前に撮られた幾つかの犯罪映画は、ニーノ・フランクが示したフィルム・ノワールの条件をクリアしてしまう作品が結構あります。
 
初期からルノワールの助監督をしていたジャック・ベッケルは後にフレンチ・ノワール群の傑作を多く手掛けますが、既にその原型が「十字路の夜」にあるんですね。
終盤における車上からの撮影は、現金に手を出すな「勝負(かた)を付けろ」を思い出すようなシーンです。
 
終盤で胸元の傷の痕を見せるシーンがエロいですね。

刑事の後ろで着替える時の太もものエロさも。

暗闇から突然発砲して来る狙撃手、終盤の畳み掛けるような事件、銃撃戦、車上と夜景のカメラワークの迫力。

終盤の狙撃者のやり取り、ラストシーンの別れ際・・・最後の最後まで息を抜けない見事な演出です。