「鉄路の白薔薇」より
全3項目
●代表作
小説「孤島の鬼」、
「人間椅子」、
「パノラマ島奇談」、
「芋虫」「陰獣」、
「明智小五郎」もの、
・「D坂の殺人事件」、
・「屋根裏の散歩者」、
・「黒蜥蜴」、
「少年探偵団」もの、
「怪人二十面相」もの等
●「江戸川乱歩全集16」で語った主な映画12本
※昭和54年(1979年)。講談社
・エッセイ「悪人志願」より
※ジゴマ ヴィクトラン・ジャッセ…「名探偵ポーラン」「探偵ニック・カーター」ものから続く一連の作品の一つ。連続活劇、ミステリー、犯罪
※ファントマ ルイ・フイヤード…連続活劇、犯罪王vs警部の狂気、残忍さ
※プロテア ヴィクトラン・ジャッセ…犯罪、スパイ、連続活劇、女賊、黒いボディスーツが強調する肉体のエロティシズム。フィルムは約50分現存
カリガリ博士 ローベルト・ヴィーネ(ローベルト・ウィーネ/ロベルト・ウイーネ)他…カール・マイヤー/フリッツ・ラング。犯罪、悪夢、恐怖
※キーン(キイン) アレクサンドル・ヴォルコフ…イワン・モジュウヒン(イワン・モジューヒン)。歴史、役者エドマンド・キーン、ロマンス、破滅。酒場でのフラッシュバック
人気者 サム・テイラー他…フレッド・ニューメイヤー/ハロルド・ロイド。コメディ、フットボール、ぶっ飛ばされ下敷きになり爆走するアクション
最後の人 F.W.ムルナウ…老後、リストラ、幻覚
※さらば青春 アウグスト・ジェニーナ…恐らく日本で1921年に公開されたマリア・ヤコビニ版。恋愛、コメディ、大学、学生生活
※「ジゴマ」についてはスコブル大博士こと駒田好洋の説明で見たとか
※「プロテア」については「屋根裏の散歩者」や「影男」等で「女賊プロテア」について言及
※「キーン(キイン)」。
制作国フランス語の原題「Kean, ou Désordre et génie」。アレクサンドル・ヴォルコフ(Alexandre Volkoff)。
ヴォルコフの出身ロシア語題「Кин, или Гений и беспутство」 。(Александр Волков)
※「さらば青春」は同じサンドロ・カマジオの舞台劇を映画化した作品が4本存在。
1913年のニーノ・オクシリアが監督した版。日本ではイタラ映画社(伊太利イタラ會社)の配給で1914年または1915年頃に公開されたらしいです。フィルムは現在行方不明
アウグスト・ジェニーナ版は1918年のマリア・ヤコビニ(日本では1921年公開)、
1927年のカルメン・ボニ出演のもの。共に現存、
1940年のフェルディナンド・マリア・ポジオリ(Ferdinando Maria Poggioli)が監督でマリア・デニス(María Denis)が出演の版が存在。現存
※乱歩いわく『映画は筋が拙くても酔わされない、撮影が拙くても酔わされない、俳優が拙くても酔わされない。
その三者が渾然として呼吸が合っていなければ上乗の芸術ではなかろう』。
映画の筋(プロット。話のおおまかな展開)
人でなしの女(人でなしの女-イニューメン) マルセル・レルビエ他…フェルナン・レジェ/アルベルト・カヴァルカンティ/クロード・オータン=ララ
チンピラ探偵 大久保忠素…原作:久山秀子。行方不明。当時今作の公開前に探偵もの映画で久山の原作なら面白いのが出来るだろうと楽しみにしていたそうです
・他人物
本位田準一…当時の乱歩の知り合いだったという映画好き
※乱歩によれば本位田は映画のプロダクションを作ろうとしていたそうで、ジョセフ・フォン・スタンバーグ「サルベーション・ハンタアズ(サルベーション・ハンターズ/救ひを求むる人々)」的なものを目指していたのではとのこと
・関連小説2本
チンピラ探偵 久山秀子
寒村 片岡鉄兵…映画を意識したフラッシュ方式(フラッシュバック)が描写された作品として
●「江戸川乱歩全集22」7本
※昭和54年(1979年)。講談社
・「随筆(乱歩随想)」
※ジゴマ
キーン(キイン)
※疑惑の影 アルフレッド・ヒッチコック…ヒッチコックで一番好きだとヒッチコック本人に言ったそうです
悪魔のような女 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー…原作:ボワロー=ナルスジャック(ボアロー=ナルスジャック)。ピエール・ボワロー(ピエール・ボアロー)&トマ・ナルスジャック
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※「悪魔のような女」はヒッチコックがナルスジャックの原作をクルーゾーに先に撮られ悔しがっていた作品として言及。
ヒッチコックは後にナルスジャック「死者の中から」を「めまい」として映画化
※乱歩が昭和31年(1956年)頃の回顧上映で見たという「ジゴマ」といった諸作品はフィルムが変色したり一部ちぎれたり1秒間の𫠚数(コマ数)がメチャクチャで恐ろしく動きの早い状態で幻滅したとか。
「ジゴマ」は1911年制作で40年以上も経過しフィルムの劣化も相当なものだったかと。
現在は乱歩が語った諸作品もほぼ修復されていますが、技術が進歩した現在と違い当時はフィルムの修復なんて想像もつかない時代だったかも知れません。
𫠚数(齣数)
※乱歩によれば「ヒッチコックのエロチック・ハラア」にてヒッチコックが日本に来た時も会って話したそうです。
ヒッチコックが来日した際、帝国ホテルにて植草甚一、双葉十郎といった映画評論家たちが迎えたこと、
座談会で根草がヒッチコックよりも探偵小説に詳しいアルマ・レヴィル夫人に食い下がっていたこと、
「続・幻影城」の「英米短篇の再吟味」でヒッチコックが序文を記した1941年(1942年)リー・ライト(Lee Wright)「The Pocket Book of Great Detectives(偉大な探偵のポケットブック)」の文を引用したことも通訳を通じて伝えようとしたこと等
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増村保造…「盲獣」映画化
塚本晋也…「双生児」〃
小林信彦(中原弓彦)…〃作家の一人。「大統領の晩餐」等でのパロディや「回想の江戸川乱歩」を執筆
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山田風太郎…交流の深かった一人