「恋山彦(戀山彥)」マキノ正博-マキノ度数120%濃縮のハチャメチャさ

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1937年、阪東妻三郎「恋山彦(戀山彥)」
現存は「風雲の巻」「怒濤の巻」を合わせた総集編1時間43分。そのため唐突に場面が終わるように感じる部分もチラホラ。
脚の怪我の件は何処で出たんだとか、あの子供は何者なんだとか色々。
というより元がどんだけ凄かったんだってくらい見せ場ギチギチモリモリ。大立ち回りありすぎて食傷気味になります。
 
うなだれた女性を乗せた神輿を担ぎ歩く男たち、空は満月の灯る夜、目的の場所に付いた途端置き去りにされる女の悲しげな顔、鎧武者が現れたと思えば次の瞬間には野を駆ける男たちのように馬を駆り霧の中へ消えていく。
 
バンツマがトーキー以降のスランプを打開し始めた時期。
今作のバンツマは後の「決闘高田の馬場(血煙高田の馬場)」における豪快なキャラとは対照的な凛々しい侍役。
と思いきやセリフ回しの難を一人二役の動と静で演じ分ける演技力、一度叫び始めりゃタガが外れたように暴れまわるダイナミックさ、とにかくバンツマエネルギー全開で作品の勢いが凄い。静と動が逆転するくらい。

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「決闘高田の馬場」を思い出す斜め下から捉えられる男女の疾走、風が吹きすさぶ野山、覆いつくすように地平から襲い掛かる騎兵・歩兵の黒い群れ!
それを男も女もなく武器を携え全力疾走で駆け下り無言で大岩から小石まで投げまくる迎撃の頼もしさ!
頼もしすぎて吹き飛ぶ恐怖感!愉快さ満点で安心と信頼のマキノ映画。
 
野原を埋め尽くす歌声に応える楽器と歌声、バンツマも天に矢を放ち豪快に返答。
 
濛々と立ち込める篝火の煙、闇夜で激突する大乱戦、響きまくる銃声、ゴテゴテに装備した馬のインパクト、完全武装で物々しすぎる仲間たち、将軍&家臣団を一喝するバンツマの叫び、それがリミッター解除の如く襖を薙ぎ倒しなだれ込むブチギレ家臣団との大立ち回り!

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薙刀振り回しながら天守閣を登っていく様を捉えるブチ抜きキャメラ、何時そんな恰好になったんだのクソ長い裾を誰も踏まねえだの天守閣の真上で斬った張ったするわ城中が気でも狂ったような大乱闘で突っ込む暇のないハチャメチャさ。
なんかあったの?ってレベルじゃねえよ!もうバンツマが無敵すぎる…。

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58分あたりで唐突にしばらくお待ちくださいと入り何があったのか。
 
籠を襲う刺客、罠、刑場に駆け寄る群衆、集結する散り散りになっていた仲間たち、御題目太鼓の響きは刑場を斬りまくり駆けまわる戦場に一変させる!侍もそれを追う群衆も走る走る走る!
 
曇り空に広がる薄野の静けさ、ぬうっと現れる御用提灯、片っ端から斬りまくり屋根の上から薪の山まで駆け抜ける一騎当千
 
死地を前に夜空を見上げる表情、長屋の狭い通路、御用提灯の輝きの中に消えていく罪滅ぼしの自己犠牲。
 
「阿波の踊子」に先駆けた阿波踊りの群れ、嵐の前の静けさの歌舞伎舞台、群衆の騒乱と混ざったかのような高笑い!

画質について

アマプラ配信の画質については春秋一刀流の記事でも言った通りVHSから焼いた感じ。
この作品に限った話じゃないですが、スチール写真との画質の差がありすぎて詐欺扱いする人も出てくるのでは。
アマプラは配信映像から直接画像を引用した方が良いと思います。それとも配信元でさえスチール写真しか許可されていないのでしょうか。
↓VHS版パッケージ

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