このDVDを作ったのはドイツだ?ドイツ版「七人の侍」


七人の侍と言えば世界中で人気があったりする作品ですが、その中で最も人気のあったバージョンの一つが「海外公開版(短縮版)」です。
これはヴェネチアでの出品の際に黒澤明自ら編集したいわばディレクターズ・カットとも言える代物。2時間40分に刈り込まれ内容です。
 
3時間30分のバージョンを知る人々にとってはダイジェスト版ですが、最初にこの「海外公開版」を見た人にとってはコチラがオリジナルとなるわけです。
 
私もこの映画のファンとして何処をどのように刈り込んだか一度は見たいと思っていましたが、今日ようやく2時間40分のDVDを見つける事が出来ました。
 
それがこの「DIE SIEBEN SAMURAI」です!

●世界のAKIRA KUROSAWA(黒澤明)」
「TOSHIRO MIFUNE(三船敏郎)」
 
邦訳すると七人の侍死す」とか「壮烈七人の侍とかでしょうか。凄まじいネタバレタイトル。
内容はというと、まずオープニングが完全にオリジナル。太鼓どころかバリバリマカロニウエスタン(スパゲッティウエスタン)みたいなタイトル画面と音楽。ドイツなのに。1分30秒くらいでした。
 
そして村の場面。
開始2分でいきなり利吉が「野武士ブッ殺そうぜ」、5分ほどで儀作の爺様「やるべし」、で6分もしない内に侍探しがスタート
もう無駄と思った部分はところどころカットの嵐。あの男性コーラスの渋い「んーんー♪」をBGMにショボくれた百姓たちが橋を渡っていく場面等もカット。人足トリオの百姓いびりもカット。なんと10分もしないで島田勘兵衛が登場。
 
オリジナル版は3分も延々と黒いバックに白字のスタッフ紹介を見せられ、12分も百姓たちの悲壮さを見せられうんと気が滅入り(誉め言葉)…からのヒーロー登場で盛り上がり話の流れが変わり物語が面白くなっていきます。ためにためてからの一撃。
また辛く当たっていた人足たちの姿があったからこそ、後のやり取りに重みが増す。
 
一方2時間40分版は登場人物たちの掛け合いが少ない。その代わりドライな侍と百姓の関係、アクション映画としての側面が強調されている感じ。
勝四郎も志乃と情事スタートでラブラブなまま最終決戦の朝を迎え万蔵涙目。勘兵衛に童貞卒業をネタに使われ百姓たちの緊張をほぐす必要は無くなった模様。
 
本作のリメイクとなるジョン・スタージェス「荒野の七人」はこの2時間40分版を参考に作られたと言っても良いでしょう(上映時間も2時間8分と近い)。
 
ただ日本人がドイツ語で会話する違和感は半端じゃないです
BGMも全部ドイツのオリジナルという感じ。利吉が侍に「貴様何てこと言うー!!」と拒否られブッ飛ばされる悲壮なシーンも「デッデデーンッ♪」という勇ましいドイツBGMのせいでまったく気が滅入らねえ(悪い意味で)
オマケに利吉の女房(島崎雪子)は日本版だと名前が分からないのですが、ドイツ版は演じた島崎雪子の名前を取って「ユキコ」と呼ばれていました。名前が分かっていた方が感情移入しやすいと思ったのでしょうか。利吉が「ユキーコー!ユキコー!!」と叫ぶ場面は吹き替え陣の演技力()も合わさりシュールな光景になっていました。
 
吹き替えだけならまだしもBGMや音響まで・・・何か版権状のトラブルでもあったのでしょうか?
 
とにかく、「海外公開版」を是非とも見たい・・・という方はこのドイツ語DVDから視聴して見てはどうでしょうか?
ドイツ語の勉強にも持って来いです(是非とも本家七人の侍を制覇してからご視聴下さい)
 
リージョン・コードは2ですので、ご視聴の際にはお手元のDVDプレーヤーorブルーレイ機器と相談しながらご確認を。
リージョンフリー・マルチフォーマット・3D対応のブルーレイDVDプレイヤーも発売されているようです。