「スタートレック:ディープ・スペース・ナイン」と映画

スタートレック:ディープ・スペース・ナイン」の160話ペーパームーンに抱れて-戦争の影パートII(It's Only a Paper Moon)」
ペーパームーンという紙の月、作り物、偽り。劇中に出てくる映画の世界も虚構によって成り立つ。それを通じて自分を見つめ直し、再び現実を受け入れ生きていく力を取り戻す。
 
シリーズもいよいよ大詰めの第7シーズン、戦争の後遺症に苦しむノーグはジョージ・スティーヴンス「シェーン」を見ていました(本来はカラー撮影、劇中では白黒で登場)。
傷を負い戦いの恐怖に苛まれるノーグは映画の虚構性を信じられないと言います。
 
ヴィック・フォンテーンはジョン・フォード「捜索者」の方が好きだと語る。
ホログラムという虚構の存在であることを自覚するヴィック。ヴィックにとって映画の虚構的な世界は近しいものを感じているかも知れません。恋愛好きのヴィック的には劇中で実らぬ想いと争いが生む悲劇、葛藤の果てに悲しく去っていくイーサンに共感を覚えたのかも知れません。
 
それでもホログラムという造り物、本物じゃないはずの存在が人間と同じように趣味を楽しみ、生きようとし、現実の人間を立ち直らせるキッカケになるというのも面白い。映画がそうであるように、ノーグの義足がそうであるように、偽物が本物になっていく瞬間は良いものですね。
 
劇中でエロール・フリンの杖の話やエルビス・プレスリーの名前が出たり、143話「消された偽造作戦(In the Pale Moonlight)」ではジョン・フォード「リバティ・バランスを射った男」を意識したセリフが出てきたり、制作者はかなりの映画好きのようです。
「捜索者」に関しては77話「デュカットの娘(ndiscretion)」にて今作を下敷きにしたエピソードもあったりします。