「あしたのジョー」シリーズ作画紹介

●概要

あしたのジョーシリーズは1970年代の初代、1980年代の「2」にかけてアニメ史に深々と刻まれた傑作の一つ。
 
ちばてつや&梶原一騎(高森朝雄)の原作漫画も描き込みと時折見せる凄まじい一撃が半端なかったですが、TVアニメ版も歴戦の猛者が集まり恐ろしい作品となっています。
週間放送で、しかもあの時代に安定と統一度の高いクオリティを維持し続けたのですから。
時に猛然と動き出し顔面をメチャクチャにする勢いでアクションを炸裂させながらっ!!
 
原作のキャラは顔つきが徐々に変貌していきましたが、アニメ版もそれをなぞるように変化。
 
それがより登場人物たちの挫折と成長を噛みしめる要因の一つになっているかも知れません。
 
漫画的デフォルメから実写的リアリティ、ぶっとく強烈な線で描く劇画に時代が移り変わったように。飛んでいるようで妙なリアルを感じさせ、ボクシングを通して描かれる漢の気迫、執念、魂のぶつかり合い!そんな野郎共を見つめ続け冷めていく女たちの視線。漫画もアニメも真っ白になるまで己を貫き通す。
 
初代は虫プロダクションの集大成的作品の一つとなり、「2」はスタジオあんなぷる東京ムービー(トムス・エンタテインメント)が組み劇画の絶頂期を象徴する作品に。
 
初代のedのクレジット上では1話ごとに作監が違う名前で記載されていますが、実際は共同だったり補佐が入り合ったり全員がほぼ全話チェックしていたらしいです。

作画監督3名

杉野昭夫(杉野アキオ)

1話。矢吹丈(ジョー)

14話。力石徹

「2」1話
「2」9話。記憶は必要以上に美化される
 
虫プロダクション時代の地獄のような制作現場から戦ってきた歴戦の勇士であり、漫画家からアニメーターになり成功した一人。
鉄腕アトムの頃から動画マンとして経験を積む。
硬質なようで独特の色気を放ち、一度見たら忘れられない目力。
あとまつ毛が凄い。
今作ではパイロット・フィルムの作画も手掛ける(場面の一部が最初のOPにも使われる)。
後にマッドハウスの設立に関り、「2」を出崎と創るためスタジオあんなぷる まで設立。
監督の出崎統とは後にスペースコブラ「宝島」といった多くの傑作でコンビを組み、特にあしたのジョー2」では全話作画という偉業を成し遂げ最後までオーパーツレベルを保つ。
他キャラクター・デザインキャッツ・アイ(キャッツ♥アイ)」、師匠の村野守美と組んだ佐武と市捕物控等。
荒木伸吾

4話
9話。力石徹

↑23話。誰この美少年
力石もクッソイケメンに
 
虫プロ時代はジャングル大帝、その後に斎藤博らとジャガードを結成し外部から虫プロを支える。
今作では作監として原画チームと共に参戦。
杉野同様漫画家から転身し培った経験、技術、体力で大きな柱に。
本作でも野性的なジョーや力石を描き続け、猛然と襲い来る者に電のような反撃を浴びせるアクションのキレも抜群。
原作同様ゴツい巨漢だった力石が何時の間にか美丈夫になっていたりするのは荒木の影響もあったりして。
しかし荒木が恐ろしいのは、そのキレいな顔でとんでもないアクションをブチかますキレ味も持っているということです。
アニメ会社では他にスタジオZや荒木プロ設立に関わり、東映動画でも主力の一人として活躍。
出崎作品には彼が長浜忠夫の仕事を引き継いだベルサイユのばら作画、「SPACE ADVENTURE コブラ(スペースアドベンチャーコブラ 劇場版」原画にも参加。
金山明博

2話

28話
8話
 
虫プロ出身。
漫画家からアニメーターとして成功した一人。
ジャングル大帝から経験を積み、特に70年代は作監として最も脂がのった時期。
杉野、荒木と共に作画を支える存在として活躍。
途中から演出の一人として参加していた富野由悠季とは後に「超電磁マシーンボルテスV」「コン・バトラーV等で彼が手掛けた絵コンテ回も含めメイン作監の一人として活躍。
サンライズにおける長浜ロマンシリーズの作画の安定に貢献。
ただ、80年代は相性の良し悪しもあってか作画が微妙になることもしばしば。
富野に起用され続けたのは仕事の速さもあったからなのでしょうか。
でもエルガイム」「Z」「ZZ」は擁護不可能。
●その他演出家7名一覧
出崎統(さきまくら/崎枕/斉九洋)

51話絵コンテ及び演出

↑「2」1話演出
 
虫プロ出身。漫画家→アニメーター。
後にマッドハウスを設立。
すべての話で絵コンテも手掛けた原作クラッシャー
脚本陣とのゴタゴタもまるごと粉砕し自分色に染め上げた模様。
演出的には初監督作とあって最初は控えめ(他のクレイジー出崎作品と比べて)でしたが、メキメキと磨きがかかる。
止め絵(ハーモニー)からの強烈な一撃、汗、影や光線、重なり合う構図。
杉野が参加していた佐武と市捕物控からの流れも感じさせる演出の妙。
特に「2」では完成された出崎ワールドを思う存分楽しめます。
流れ出る汗や鮮血だけでなく、ゲロだってあんなに美しくしちまうんですから(褒め言葉)。
他作画では悟空の大冒険、絵コンテルパン三世 1st」、監督ガンバの冒険等。

吉川惣司(小田響堂/高橋和美/京春香/小田経堂(OP及び絵コンテベルサイユのばら等)、
 
 
富野由悠季(富野喜幸/とみの善幸/斧谷稔/斧谷喜幸/井荻麟/井草明夫/阿佐みなみ(監督伝説巨神イデオン等)、
 
 
波多正美(監督ハローキティシリーズ、「スティッチ」シリーズ等)、
 
平田敏夫(監督「ユニコ」「ボビーに首ったけ」等)。
●その他原動画(原画)17名一覧
林政行

4話原画
 
作画から演出まで多数こなした腕利きアニメーターの一人。
りんたろう(林重行)の弟。
今回はジャガードの原画マンとして神宮、川端、安部らと共に主人公の顔面を容赦なくズタボロにする強烈なアクションをブチかまし裏から作画を支える。

神宮慧(キューティーハニー」「魔女っ子メグちゃん等。「2」にも参加)、
 
川端宏(キャシャーン」「おそ松くん(鴫野彰)」等)、
 
川尻善昭(演出まんが日本昔ばなし、監督「X-エックス」「獣兵衛忍風帖等)、
 
森田浩光(演出及び作画鉄腕アトム(石黒昇)、絵コンテおじゃる丸等)、
 
正延宏三(作画鉄腕アトム(石黒昇)、原画宇宙戦艦ヤマト等)、
 
札木幾夫(花の子ルンルン」「キャンディ・キャンディ等。「2」にも参加)、
 
清山滋崇(ゲゲゲの鬼太郎(葛西治)」「パーマン(原田益次)」等)、
 
 
新田敏夫(「国松さまのお通りだい 」「太陽の牙ダグラム等)、
 
 
 
 
金沢比呂司(金沢比呂志(ハイスクール!奇面組 」「さすがの猿飛等)、
 
アベ正己(安部正己(こどものおもちゃ」「おじゃる丸等)、
 
佐々門信芳(キャラデザ及び作画ボルテスV、作画コン・バトラーV等)、
 
進藤満尾(チーフアニメーター及び作画花の子ルンルン、作画ラ・セーヌの星等)。
 
70年代の佐々門と進藤は最も脂が乗っていた全盛期
「2」より参加した原画11名一覧
こだま兼嗣(児玉兼嗣)

7話原画
 
ルパン三世でも紹介。
出崎作品ではスペースコブラの絵コンテも手掛ける。
アニメーターとして優秀な存在でしたが、後に杉野の弟子である平山智が作画を手掛けたキャッツ・アイシリーズでディレクターを務めたのがキッカケで名監督として名を馳せていくことになります。

大塚伸治(作画スペースコブラ、原画フリクリ等)、
 
 
塚田信子(作画キャッツ・アイ、原画スペースコブラ等)、
 
本木久年(キャラデザ銀河英雄伝説シリーズ、作画ふしぎ遊戯等)、
 
大橋学(原画スペースコブラ」「ガンバの冒険等)、
 
森本晃司(原画スペースコブラ、メカ及び原画「SF新世紀レンズマン等)、
 
 
福島敦子(ゲームキャラデザポポロクロイス物語、原画スペースコブラ等)、
 
杉野左秩子(原画魔女の宅急便」「紅の豚等)、
 
宮尾岳(キャラデザ原案魔物ハンター妖子、漫画並木橋通りアオバ自転車店等)、
●その他動画4名
須藤昌朋(キャラデザ及び作画名探偵コナン」「とっとこハム太郎等)、
 
 
河南正昭(作画めぞん一刻美味しんぼ等)、
 
名倉靖博(「2」劇場版より参加。他キャラデザ楽しいムーミン一家等)、
●その他仕上げ1名
茶谷与志雄(アニメーションディレクター「X-メン:エボリューション」、原画バットマン(アラン・バーネット)」等)。