山中貞雄の「磯の源太」「怪盗白頭巾」

 
●磯の源太 抱寝の長脇差
山中貞雄の幻の傑作と言われる作品の一つ。
かつて岸松雄が激賞して詳細なディティールを残していることでも知られます。
 
残念ながら現存するフィルムは約1分の断片のみ。
ほぼ殺陣の場面で、何かストーリー的なものを感じられるのは主人公らしき男が抱える男の亡骸?と終盤にチラッと女性が登場するのみ。

ストーリーはまったく掴めないですが、それでも山中貞雄独特の殺陣を見る事が出来ます。
丹下左膳のような洗練されたものはまだ無いですが、高速で複数の男たちと斬り合っていく。
 
ただ、この作品は鍔迫り合いの多さに驚きます。後年の丹下左膳河内山宗俊はほとんど鍔迫り合いをせずに一瞬で切り払うという具合。この頃はまだ模索中だったのでしょうか。

斬り合っている最中に、男が敵を足蹴にする場面が2度出て来たのには更に驚きました。
斬った敵を薙ぎ倒す際と、鍔迫り合いの際に敵を蹴り離す瞬間。コレは他の時代劇でも中々見られる光景じゃありません。

怪盗白頭巾 前篇・江戸の巻
コチラも数十秒の断片のみ。
何やら怪しい算段をしてそうなオッサンと老人。
そこに障子を開き刀を上にかざしながら突入する怪盗白頭巾の一味!!刃が空を斬り、その直後に捕り手たちが群をなして迫り来る。
 
白頭巾は仲間を逃がして殿を買って出る。障子に隠れ、敵が来た瞬間に浴びせる一撃。
複数の捕り手と斬り結び、斬られた敵が障子とともに倒れたりして、フィルムは終わります。

上記二作は日活から発売された河内山宗俊のDVD特典として収録されています。