「放送」-テオ・アンゲロプロスの短編

放送
Εκπομπή
★★★★(傑作)
 
テオ・アンゲロプロス初期作短編「放送」について。
テオ・アンゲロプロスの数々の傑作の中で、「放送」は最も活き活きとした、短くも中身の濃い映画です。

たった20分でアンゲロプロス特有のロングショットとクローズアップ、そしてオープニングからブッ飛ばすように流れる軽快な音楽のハーモニーがとても心地良い一篇なのです。

ラジオ局の人々のやり取りや街頭インタビューを通して当時のメディアのやり方、メディアが作る虚像を暴こうとする試みが面白い。

途中である男がスーツを着て街中の広い道をポツリポツリと歩いていく場面、浜辺のカップルが車の中に入っていく様子をロングショットで収めた場面に、既にアンゲロプロスが居るのです。
道を歩いていく本人には目的地が見えていますが、それを見守る我々が感じる言い知れぬ不安。彼は無事に目的地にまで辿り付けるのか、付けないのか。そういう見る者の心をかきむしり、ワクワクさせる映像がこの映画には既に存在しているんですよ。

クローズアップでたまに映るギリシャ美人が可愛い。

アンゲロプロス本人は「初期の作品は失敗作」と語りますが、「失敗」は成功の元、むしろその「失敗」と言われる逸品に刻まれた面白さを発見するのがファンの役目ではないでしょうか。
最高に魅力的な失敗“したらしい”傑作です(変な日本語で申しワケないです)。
 
テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX IVに収録されています。